お知らせ共通農業語彙(CAVOC)農作業基本オントロジー(AAO)農作物語彙体系(CVO)ウシ用飼料オントロジー(CFO)農業者向け研究グループ
概要
農作業基本オントロジー
農作物語彙体系
ウシ用飼料オントロジー
参考文献・協力者




概要

共通農業語彙 (CAVOC : Common Agricultural Vocabulary)

語彙やそれによって記述された知識の意味は,知識のバックグラウンドにある暗黙的な情報の違いにより異なることがあります。例えば,“キャリア”は保菌者,電子通信事業者,経歴,物を運搬する器具を指し,使用される分野によりその意味が異なります. また,“ダイズ”・“コムギ”は研究分野により表記が異なり,これらを作物と見なす分野ではカタカナで,食物とみなす分野では漢字で表記する傾向があります.このような語彙の多様性は,バックグラウンドの異なる農家・流通加工業者・研究者等が関与する農業ドメインで大きく,情報共有や交換の大きな障害であると推測されます.

内閣府,IT総合戦略本部は農業情報の相互運用性等の確保に資する標準化や情報の取扱いに関する政府横断的な戦略を策定しました.また,その戦略に基づくロードマップの中で,「農作業の名称」を優先的に標準化に取り組むべき項目の一つに選定しました.これは,「農作業の名称」が,農作業や作物生育関連情報の記録・管理等を行う多種多様な農業IT システムでよく利用されるにもかかわらず,ユーザー間,各IT ベンダー間で標準化されておらず,項目データの共有や比較の大きな障害であると判断されたためです(内閣府「農業ITシステムで用いる農作業の名称に関する個別ガイドライン」 2015).一方,我々も「農作業の名称」の標準化・共通化が多圃場営農管理システム間の連携に必須と判断し,その基盤となる農作業語彙体系(用語,および用語間の関連等を体系的に整理したもの)構築を2014年度から開始しました.
 
農作業基本オントロジー(AAO, Agriculture Activity Ontology)

人が農作業を表現する用語は持っている知識・経験、およびその際の状況によって異なります。農業ITシステムにおいても同じ農作業のデータが異なる項目名を付けて管理されることが少なくなく、システム間のデータ連携を阻害する要因の一つとなっています。例えば「イネを刈ること」に1時間要したことを、システムAでは項目名「収穫」として、Bでは「稲刈り」として、Cでは「稲かり」として管理された場合、プログラムは各々別の作業に1時間要したと処理します。この際、「稲刈り」、「稲かり」がいずれも【稲を「収穫」する作業】と定義する基盤が参照できれば、いずれも「収穫」に1時間要したと処理できます。我々は、システム間のデータ連携や統合を推進するため、農作業を定義する基盤;農作業基本オントロジー(AAO)を構築しました。農作業基本オントロジーは、農作業を目的、行為、対象、場所、手段、道具(機材)、時期、作物の8つの属性と属性値で定義し、属性値から農作業概念の包含関係に注目して階層構造を構築しました。記述論理を用いた設計により概念同士の関係性を明確にしたために、概念の推論も可能です。
http://cavoc.org/aao.php
 
農作物語彙体系(CVO, Crop VOcabulary)

 安全な農作物を消費者に供給し健康への悪影響を未然に防ぐため、HACCP(危害分析・重要管理点)やトレーサビリティを導入し,農場から食卓にいたるフードチェーンで食品の安全性を確保する重要性が高まっています。上記を背景に、これまでフードチェーンの各段階が収集管理してきたデータを,相互利用できるシステムの構築が求められています。一方、フードチェーンに関与する多様なキープレーヤー;生産者・流通小売業者・消費者・行政機関が、同じ農作物のデータを異なる名称を付けて管理することは少なくなく、データの相互利用を阻害する要因の一つとなっています。そこで、データ項目名が示す農作物概念の共通化(「サヤエンドウ」は「莢豌豆」と同じ意味であることを共通認識とする)を進め、システム間のデータ連携を促進するため、農作物を定義する農作物概念体系(CVO)を構築しました。また、CVOを農作物の標準語彙と位置づけて、農作物に関する重要な語彙リスト間のデータ連携を実現しました。
http://cavoc.org/cvo.php
 
ウシ用飼料オントロジー(CFO, Cattle Feed Ontology)

飼料を表現する言葉は、同義語(ダイズ油粕とダイズ粕)、異表記語(豆腐粕、とうふ粕、Soybean curd residue)、異なる粒度の語(ダイズ粕と屑ダイズ粕)など多様です。ITシステムにおいても、同じ飼料にも関わらず異なる項目名で管理されることは少なくなく、データを連携し統合利用する際の阻害要因となります。一方、飼料を定義する共通語彙をコンピュータが参照できれば、例えば項目名“ダイズ油粕”と“ダイズ粕”を同じ項目名で処理するなど意味を考慮したデータ処理が可能になると考えられます。そこで、飼料の共通語彙として利用されるよう、飼料、飼料間の関係を定義するウシ用飼料オントロジー(Cattle Feed Ontology, CFO)を構築しました。
CFOは、代表的な飼料成分表である、日本標準飼料成分表(中央畜産会)、飼料の公定規格別表(農林水産消費安全技術センター)、NRC乳牛飼養標準付属の飼料成分表[National Research Council (米)]のデータ連携を想定して構築しています。成分値に影響する原材料、その利用部位、加工法で定義した総称名、総称名の下位分類となる標準名を含みます。各成分表のデータ項目名は標準名と対応しており、CFOを基準とした項目名間の関係が明確になっています。原材料が農作物の場合は、連携する農作物語彙体系から学名等の植物学的情報を参照できます。
CFOはデータ構造が決定した段階であり、今後、データの精査や追加を進める予定です。したがってデータの信頼性、正確性、有用性等についてはご自身で判断し、自らの責任のもと利用してください。
http://cavoc.org/cfo.php
 
参考文献・協力者
       
文献名 著者・編者 発行年 発行期間
農業機械学 薗村光雄ら著 1965 朝倉書店
農業機械学概論 庄司英信著 1967 養賢堂
改訂農業機械ハンドブック 農業機械学会編 1975 コロナ社
柑橘の品種 岩政正男 1976 静岡県柑橘農業協同組合連合会
果樹指導指針 長野県全国農業協同組合連合会長野県本部 1977 長野県全国農業協同組合連合会長野県本部
世界果樹図説 中村三八夫著 1978 農業図書
野菜の地方品種 野菜試験場育種部 1980 野菜試験場育種部
野菜の保存品種 野菜試験場育種部 1981 野菜試験場育種部
新版農作業便覧 日本農作業研究会編   1985 農林統計協会
園芸事典 松本正雄ら編 1989 朝倉書店
農業施設ハンドブック 農業施設学会編 1990 東洋書店
園芸植物大事典 第1巻~第5巻 塚本洋太郎著 1994 小学館
農業機械用語辞典 今井正信編 1994 新農林社
生物生産機械ハンドブック 農業機械学会編 1996 コロナ社
熱帯果樹とその利用 大東宏 著, 農林水産省国際農林水産業研究センター編 1997 農林統計協会
熱帯の有用果実 土橋豊 著 2000 トンボ出版
図説熱帯の果樹 岩佐俊吉 著、農林水産省国際農林水産業研究センター編 2001 養賢堂
新編野菜園芸ハンドブック 西貞夫 監修 2001 養賢堂
新編果樹園芸学 間苧谷徹ら著 2002 化学工業日報社
都道府県別地方野菜大全 芦澤正和 監修, タキイ種苗株式会社出版部編 2002 農山漁村文化協会
園芸学用語集・作物名編 園芸学会編 2005 養賢堂
特産果樹 間苧谷徹ら著 2006 日本果樹種苗協会
最新農業技術事典 NAROPEDIA 農研機構編 2006 農山漁村文化協会
熱帯果樹の栽培 米本仁巳著 2009 農山漁村文化協会
熱帯くだもの図鑑 海洋博覧会記念公園管理財団 制作・監修 2009 海洋博覧会記念公園管理財団
地域食材大百科第2巻 野菜 農山漁村文化協会編 2010 農山漁村文化協会
作物学用語事典 日本作物学会編 2012 農山漁村文化協会
日本の野菜文化史事典 青葉高著 2013 八坂書房
野菜品種名鑑 2017年版 日本種苗協会 品種名分科会編 2017 日本種苗協会
農業技術体系 果樹編 農山漁村文化協会 農山漁村文化協会
Vitis International Variety Catalogue VIVC Julius Kühn-Institut - Federal Research Centre for Cultivated Plants http://www.vivc.de/index.php
(2017.9参照)
薬用植物総合情報データベース 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 http://mpdb.nibiohn.go.jp/
(2017.9参照)
BG Plants 和名-学名インデックス(YList) 米倉浩司・梶田忠 http://ylist.info/
(2017.9参照)
農作業データ集 日本農作業学会 http://www.jsfwr.org/fw_data/
(2017.9参照)
농업용어사전
(農業用語辞典)
농촌진흥청
(韓国農村振興庁)
https://www.nisshinkyo.org/search/college.php?lng=5&id=483
(2020.4参照)
doopedia Doosan Corp. http://www.doopedia.co.kr/
(2020.4参照)
Wikipedia韓国語版 https://ko.wikipedia.org/
(2020.4参照)
氏名 所属
古川嗣彦 農研機構フェロー
桝田正治 岡山大学名誉教授
吉岡宏 吉岡技術士事務所代表
吉岡博人 農研機構果樹茶業研究部門
河瀬真琴 東京農業大学農学部教授
加茂幹男 元農研機構畜産草地研究所草地研究監
谷口幸三 広島大学名誉教授
村上賢二 岩手大学農学部教授
宮﨑茂 一般財団法人生物科学安全研究所参与
上山泰史 日本草地畜産種子協会飼料作物研究所研究部長
 

本研究(の一部)は、JRA畜産振興事業(牛の飼養衛星オントロジー構築事業)によって実施されました。



本研究(の一部)は、内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 「次世代農林水産業創造技術」(管理法人:農研機構 生物系特定産業技術 研究支援センター)によって実施されました。

cavoc.org